尾前ブルー

椎葉村中心部から車で約40〜45分。フットパスコースのある尾前集落に向かう道路をまたぐように、朱色の鳥居が立っています。
額束(がくつか)に『天孫日之國』の文字が認められます。
鳥居の先には、御神体・御本尊でもある国見岳(標高1,739m)がそびえています。

文豪・吉川英治によって『日向椎葉湖』と命名された上椎葉ダム湖の上流には、ダム湖に注ぐ支流がいくつかあり、尾前川もそのひとつです。
先述の鳥居あたりまでは、ダム湖が蓄えているような透明度に乏しい水が続きますが、鳥居をくぐったあたりから、水そのものが劇的に一変します。
まるで天孫日之國の大神が「これより先は“結界”なるぞ、心して進むべし」と諭しているかのようにも思えるほどであり、劇的という表現、決して誇張ではありません。

川面に目を凝らしてみてください。流れがちょっとでもあるところの細かな小々波と、淀んだところでの川底まで透き通って見える様が、ほんのわずかな流れの綾(あや)で瞬時に移り変わる、きめ細かで繊細な川面の様相。
そして、周囲の樹影が川面に投じられた様は、まるで印象派絵画をそのまんま動画にしたかのようです。
なにより、鳥居から先の川の色は、他所にあるどんな川とも異なる、尾前ならではな唯一無二なる色、すなわち『尾前ブルー』を醸し出しているのです。
一日中とどまって、そんな川面を眺めるだけでも、飽きることはないと思います。せせらぐ音が、これまた心地よい。

『尾前ブルー』は、こうした尾前川の色そのものの総合的な表情であり、同時に川を取り巻く周囲の大自然全体の美の移り変わりを総称したものとして定義し、ご紹介するものです。

撮影日データは2018年10月21日の午前9時から11時にかけて、及び同年12月15日の夕刻。ともに日本晴な青空でした。
前後して、曇天の時に通過した時も『尾前ブルー』は晴天日と遜色なく迎え入れてくれました。
紅葉にはちょっと早かったものの、最盛期の美しいパノラマビューは、きっと容易に想像されることでしょう。
初夏にはブナやナラなど広葉樹を含むさまざまな青葉とのコラボレーションが見られます。
また、1日の中でも朝と昼、夕刻とでは、劇的な変化が見られるに違いありません。

鳥居から先の模様は、「尾前渓谷」で検索すると、九州屈指の紅葉の名所、あるいは平家マスや天然鮎の生息地など、観光的情報がいろいろ出てきます。
尾前川は、河原に下りることのできる場所がそんなに多くありません。
そして、下りると『尾前ブルー』の神秘性が薄れてしまったりします。

ぜひ、通行の邪魔にならないような凹地に車を停めて、ガードレール越しに見下ろしてください。
「神秘的」という形容さえも陳腐に思えてしまう『尾前ブルー』な水が、いつ行っても四季折々の風景とともに、迎え入れてくれることでしょう。

投稿日:2018年12月13日 更新日:

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